「私…魅力ないのかなあ」
ガンッと思いきり、手に持っていた紙コップを机に叩きつける。中身は食堂のウォーターサーバーで入れてきた水だ。
同級生の西野はその姿を見て、慰めるべきかとしばし考えていたので、沈黙になっていた。
「あれっ椎名ちゃん!どしたの?また荒れてるねー。」
陽気に声をかけてきたのは別の学科の友人である実香だ。
「実香ちゃん…聞いてよ~また振られたの!!告白してないけど!」
告白してないんかいと内心つっこむ西野。
ここでようやく沈黙を破り、質問を投げかけた。
「告ってないって…じゃあなんで振られたって分かるんだよ。」
遥は西野を一瞬キッとにらみつけた後に、涙ぐみながら話す。
「先週…友達と遊んでたんだけど。そのときに先輩と付き合ってるって聞いたの。それでいつからって聞いたら…先輩が私と1日デートした次の日だよ!?カラオケもしたんだよ、2人で!ありえないでしょ!」
「「あぁ……。」」
西野と実香は2人一緒にため息をついた。どうやら同じ感想を持ったようだ。
本当に、この子はつくづく男運がない。
というか、かなわない恋ばかりしているからだ。
おまけに、変な男にばかり言い寄られたり仲良くしているものだから、本人が気づかない限りこのままだ。
「…ま、類は友を呼ぶって言うしな。」
「にっ西野!」
実香が気づき、西野が口を手で覆い隠そうとした時には遥はものすごい形相で西野を見ていた。
「なんか言ったか西野!あたしもクズだってか!」
「そこまで言ってないだろ!」
「あっカナタンからだ!」
スマートフォンのメッセージの着信音に気づき、実香が笑顔でスマートフォンの画面に釘付けになった。
「大学の講義が終わったからデートしよって。またね、ハルちゃん、西野!」
実香はスキップしながら、食堂を出て行った。
「…森口でも彼氏できるんだよな……って、おわっ!」
西野が実香を複雑そうな表情で見送る。
おそるおそる遥に視線を移すと、さっきよりも沈んだ様子で机に突っ伏していた。
「実香ちゃんは素直だしかわいいもん。……でも、私は好きだってばれないように振るまうし、向こうから告ってくるまで待ってるのがダメなのかな…。」
そんなことない、と即座に西野は言おうとしたが、黙り込んで少し考え込んだ。
考えても、何も最善の答えのようなものは出てこなかった。
「いいんじゃねえの。そうしてしまうのも椎名ちゃんだしな。
そこがイイって言ってくれる人を好きになれば、いいんじゃねえの。」
「え…そんな人、いないよ」
遥は意外そうに西野に言い返したが、西野は少し照れているようにも見えた。
(励ましてくれるなんて…ガラじゃないくせに)
先輩が自分の友人と付き合ったのは悔しい。
でも、励ましてくれるこの友人と過ごす時間に、今は少し浸っていたいかな。
◆この物語は完全フィクションです。0話目はこちらから!