話を聞く。あるいは、話を聴く。
私たちが「人の話をキク」とい表現する時、
それは「人の話を聞く」ことである。
本記事でご紹介する「聞く技術 聞いてもらう技術 (ちくま新書)」にはそのように表現されていました。
???
と一瞬うなる言葉です。
そして、その後に、
・私たちがいかに、話を聞いてもらっていないか
・あるいは、人の話をちゃんと聞いていないか
巷では、「聞く技術」「傾聴力」という本が多く出版されています。
人は聞き方が9割という本があるくらいですから、
人の話を聞くのにも何か技術が必要なのかと、落胆してしまう。
しかし、逆の発想の本って、ないんですよね。
人の話を聞ける人は優秀、仕事ができる、信頼されると言っても、
「聞いてもらうことの大切さ」を説いている本って、ないんです。
あるとしても、ストレス関連の本に、ちょっとだけ書いてあるレベル。
社会に、「人に自分の話を聞いてもらう」という価値観が、
日本ではあまりないんですよね。
むしろ、自分の話ばかりするのは相手に迷惑がかかるとか、
甘えるな自立しろ、とか。
けれども、自立をしろ!を突き詰めていった社会は、
アメリカのように社会保障が厚くない国になってしまう危険性をはらんでいます。
要は、精神を病んでしまうのも、疲れてしまうのも、
パニックになるのも、頑張れないのも、
「あなたの努力が足りないからだ」「怠け者だ」と一言で片づけられてしまう。
私は一度、精神を病んで退職してしまったので、世の中が優しくないことを知っています。それと同時に、優しくしてくれる人もいるということも、知りました。
聞く技術 聞いてもらう技術 (ちくま新書)に書かれていた
「聞いてもらうための技術」。
読んでいると思わず笑ってしまうものもあるんですが、
・眉をしかめて周りの人にどうしたんだろ…と思わせる
なんてことが、書いてあるんです。
確かに、眉をしかめて深刻そうな顔をしていたら、どこか具合が悪いのかな?とか、ヤバいことになってるのかな?と思わず心配してしまいますよね。
また、薬を飲んで、健康診断の悩みの話をするとかは、年齢を重ねてないと共有できない悩みですが、これも仲良くなるという世間知です。
そんな感じで、延々と「聞いてもらうことは大事だよ。でも人の話も聞くことも大事だよ」という話をし、幕を閉じます。
この本は、昨今よく売れているビジネス書とか医療本とは違って、
とてもゆる~い口調で書かれています。
本って、良くも悪くもしっかりとした文章ルールで、ちゃんとした言葉遣いで書かれていることが多いじゃないですか。
それが、全く感じられないんですよね。
この人はカウンセラーでもあるので、患者さんに対しても、このような喋り方をしているんだろうなと、著者である東畑さんの人間性を垣間見たような気持ちになります。
この本は、帯に「7万部!ぞくぞく重版!」と書かれているように、とても売れています。話を聞いてもらったかのような読後感と帯に書かれているので、そこも共感できます。
聞くことが大事だ!聞いてもらうことが大事だ!と言われても、
「え、でもさ~」って言いたくならないんですよね。
そこが不思議な本であるように思います。
とはいえ、この本の内容をまとめて、聞いてもらうことの大切さを、知人や家族に話したとしても、私では全然説得力はないでしょう。
この本を読んで、東畑さんの言葉を読むからこそ、
「そうか、私たちに足りないのは聞いてもらうことなんだな」と
スッと心の中に入ってくる。
本書にも書かれていたように、
「聞く力が必要とされているのは、社会全体が、人の話を聞けなくなっているからだ。」という主張が、聞いてもらうことの大切さと相まって、身に沁みてきます。
聞く力が大事だと言われても、なんだか納得できなかった心を、そっとほぐしてくれたかのよう。
…とまあ、賞賛しすぎるのもアレなので、このくらいにします。
まさか、感想だけで1500文字もいくとは思いませんでした💦
最後に一言だけ、
悩んでいる人ほどオススメです!!!